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福岡地方裁判所柳川支部 昭和49年(ワ)18号 判決 1976年8月25日

原告

田嶋アイ子

被告

奈良田義正

ほか一名

主文

一  被告らは原告に対し、各自、金一〇四万二、一三六円及び内金九四万二、一三六円に対する昭和四六年一二月二三日から、内金一〇万円に対する昭和五一年八月二六日から、各支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その三を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決の一項は仮に執行することができる。ただし、被告が金七〇万円の担保を供するときは右仮執行を免れることができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは原告に対し、各自、金一六四万〇、六〇五円及び内金一四四万〇、六〇五円に対する昭和四六年一二月二三日から、内金二〇万円に対する本判決言渡しの日の翌日から各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの連帯負担とする。

3  仮執行の宣言

二  請求の趣旨に対する答弁(被告両名とも)

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  敗訴の場合には仮執行免脱の宣言を求める。

第二請求原因

一  事故の発生

1  次のとおりの交通事故が発生した。

(一) 発生日時 昭和四六年一二月二三日午後三時頃

(二) 発生場所 山門郡山川町大字尾野二〇二二番地

(三) 事故区分 左記(四)の車両が(五)の車両に追突

(四) 加害車両 福岡6さ四八五八号自動三輪車

(五) 被害車両 福岡6ひ四七四八号軽貨物自動車

(六) 被害者 原告 女 四二歳

2  傷害の部位、程度、入院治療期間、後遺症の程度

原告は右1の交通事故によつて、以下のとおりの傷害を受けた。

頸椎捻挫、右項部痛及び後頭神経刺激症状があり、第三、五頸椎項部に圧痛あり、レントゲン撮影上生理的前彎の消失があり、難治性で一時頸椎の運動障害も出現した。

山門郡瀬高町の森整形外科医院に昭和四六年一二月二三日から昭和四七年一一月四日まで三一八日間(治療実日数一八七日)通院して、薬物療法、理学療法を受け、その間三池郡高田町のヨコクラ病院に昭和四七年四月二一日から同年六月二日まで四三日間(治療実日数七日)頸椎牽引療法、頸椎矯正ビタカイン注射等の治療を受けた。

昭和四七年一一月四日には、後遺症として、

「少し仕事をすると、肩こりを生ずる、頭痛をきたす。両側後頭神経圧痛、レントゲン線上側方撮影にて生理的な前彎が減弱している。」

との症状が残存し、症状固定状態となり治癒す、ということで、通院はしていないが、現在に至るも殆んど農業はできず、家事も思うようにできない状態である。

3  事故の態様

被告奈良田義正は、加害車を運転し、原告運転にかかる被害車を、車間距離七メートルで追従しているとき、対向車に気を奪われ、前方注視義務を怠つた過失により、原告が左折しようとして減速したのに気付かず、被害車後部に自車前方を激突させた。

二  責任原因

被告義正は本件事故当時一八歳であり、父は昭和四六年九月一日死亡し、母である被告ユリ子は夫(義正の父)の後を継いで農業を営んでいて、本件は被告義正において右農業による野菜を運搬中前方注視義務を怠つた過失により惹起した事故であるから、被告義正は民法七〇九条により、被告ユリ子は民法七一五条一項により、本件事故により原告が蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

三  本件事故による原告の損害

1  慰藉料

(一) 原告は未亡人であり、一家の支柱となり、本件事故当時亡夫の母田島キクノ(七五歳)、高校生の長女保子、中学生の二女祐子、小学生の三女トモ子、小学生の長男清次の面倒を見且つ田二反五畝、ミカン畑五反を耕作し竹林約四反の施肥・竹の子(筍)堀りをして、一家の生計を維持して来た。本件事故に遭つた日は、ちようど師走であり、森医師からは入院治療をしなければならないと言われたが、家族のため、後頭部・頸椎項部の激痛に耐え、身体が自由にならないのに我慢して、通院することとしたのである。

(二) 原告は、本件事故以来昭和四七年六月一七日まで全く農業及び家事に従事することができず、その後次第に少しは仕事や家事に従事することができたが、現在も前記後遺症になやまされ、以前の半分も仕事ができない状態であつて、原告の精神的苦痛は筆舌に尽くし難く、慰藉料としては、自賠責保険金による僅少の補填を考慮にいれても、金五〇万円を下らない。

2  得べかりし利益の喪失

原告は本件事故当時四二歳で、右1に記載のとおり一人で農業及び家事をし、しかも農閑期には土建の人夫として働いて現金収入を得ていたものであるから、ただ単に、交通事故により自ら農業に従事することができなかつたための農業所得の減少、他人を農作業に雇つて賃金として支出を余儀なくされた金員、及び自己が人夫として働くことができなかつたため得られなかつた賃金収入の合計だけを以て得べかりし利益とすることは不合理由であり(何となれば農閑期といえども必ずしも毎日人夫として働くものではなく家事労働に専念する日もあるからである)、以上のほかに家事労働に従事する部分の経済的評価をなした金額を加算してはじめて得べかりし利益の算定ができるものといわなければならない。原告のごとく主婦労働(家事労働)のほかに時には農業にも従事しまた時には人夫として働く女性の総労働の経済的評価が、対応年齢の家事のみに従事する女子のそれ、ひいては女子労働者の平均賃金よりも高いとみるべきは当然であり、少なくとも右平均賃金を下らず、同額として算定することは合理的である。

そうして、昭和四五年度の賃金センサス第一巻第一表女子労働者、学歴計の区分のうち四〇歳から四九歳までの分をみると、平均月間きまつて支給する現金給与額は金三万七、四〇〇円、平均年間賞与その他の特別給与額は金九万二、四〇〇円であるから、原告の年齢に相応する女子労働者の一年間の平均賃金は、

37,400×12(月)+92,400=541,200

の計算により、金五四万一、二〇〇円となる。

原告は、本件事故に遭つたため、

(1) 昭和四六年一二月二三日から昭和四七年六月二二日までの六ケ月間は全く農業及び家事に従事できず、

(2) その後昭和四七年六月二三日から同年一二月二二日までの六ケ月間は少なくとも六割の労働能力を喪失し、

(3) 昭和四七年一二月二三日から昭和四八年一二月二二日までの一年間は少なくとも五割の労働能力を喪失し、

(4) 昭和四八年一二月二三日から昭和四九年一二月二二日までの一年間は少なくとも四割労働能力を喪失し、

(5) 昭和四九年一二月二三日から昭和五〇年一二月二二日までの一年間は少なくとも三割の労働能力を喪失した。

よつて、右各期の逸失利益の計算をしてみると、

右(1)が 541,200×0.5(年)=270,600

右(2)が 541,200×0.5(年)×0.6(喪失率)=162,360

右(3)が 541,200×0.5(喪失率)=270,600

右(4)が 541,200×0.4(同上)=216,480

右(5)が 541,200×0.3(同上)=162,360

であるから、右昭和五〇年一二月二二日までの逸失利益の合計は、右(1)ないし(5)の計算結果の合計、すなわち一〇八万二、四〇〇円である。

右金額を昭和五〇年一二月二二日に受領すべきものとし、これを本件事故当時の現価にするため中間利息を差引いて計算すると金九四万〇、六〇五円となる。

3  弁護士費用

被告らは誠意がなく本件事故による原告の損害を賠償しようとしないので、原告はやむなく昭和四九年二月一〇日弁護士山口親男に本件の訴提起及び訴訟追行を委任し、右同日着手金として金一〇万円を支払い、且つ謝金として本判決言渡の日に金一〇万円を支払う約束をし、右同額の損害を蒙つた。

四  よつて、原告は被告らに対し、金一六四万〇、六〇五円及び内金一四四万〇、六〇五円に対する本件不法行為日(昭和四六年一二月二三日)から、内金二〇万円に対する本件判決言渡の翌日から各完済まで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の各自支払を求める。

第三請求原因に対する答弁

一  請求原因一の1の事実は認める。

同一の2の事実中後遺症の程度に関する事実は否認し、その余の事実は知らない。

同一の3の事実はおおむね認める。

二  請求原因二のうち被告ユリ子に関する民法七一五条の責任原因の主張事実は否認する。その余の事実は認める。

三  請求原因三の1(慰藉料)については、原告が精神的苦痛を受けたことは認めるが、具体的な事実は知らない。慰藉料の金額は争う。

同三の2(得べかりし利益の喪失)のうち、原告が本件事故による傷害のため六ケ月間全く農業及び家事に従事できなかつたとの点は争う。その余は知らない。

同三の3(弁護士費用)については、原告が原告代理人に本訴提起及び訴訟追行を委任したことは認める。着手金額、成功報酬額は知らない。その余の事実は否認する。

第四被告らの主張

一  昭和四八年三月頃、当事者双方間に、本件交通事故について、

被告らは原告に対し治療費以外に金一五万円を示談書と引換えに支払う。原告はその余の請求を放棄する。

という内容の示談が成立した。

二  自賠責保険から原告に対し、治療費のほかに、金一九万四〇〇〇円が原告に支払われた。

三  原告は、右金銭が自賠責保険から支払われた点に不満を述べ、被告ら自身が支払うべきであり前項のほかに更に金一五万円が支払われなければならない、と主張するに至つた。

しかし、前項の支払によつて、被告らの債務は履行ずみである。

第五被告らの主張に対する原告の答弁

被告らの右主張二の事実は認める。その余の主張事実は否認する。

第六証拠〔略〕

理由

一  請求原因一の1の事実は当事者間に争いがない。

請求原因一の2(原告の受傷・治療・後遺症の点)について判断するに、成立に争いのない乙第一号証、原告本人尋問の結果によつて成立の認められる甲第三、第四号証によると、原告は、<1>本件交通事故によつて頸椎捻挫(むち打ち症)の傷害を受け、<2>その治療のため山門郡瀬高町大字下庄五九〇番地森整形外科医院に、事故の日たる昭和四六年一二月二三日から昭和四七年一一月四日まで三一八日間(うち治療実日数は一八七)通院し、<3>右医院での診療としては、右項部痛及び後頭神経刺激症状があり、第三、第五頸椎項部に圧痛が認められ、レントゲン撮影所見として頸椎の生理的前彎の消失があり、通院治療を続けたが次第に頭痛をきたし、発熱し、嘔気があるなどのバレー・リユー氏症状を呈し、これに対し、薬物療法・理学療法を施行したところ、症状は一進一退する状態で、難治性であり、一時頸椎の運動障害も出現し、左記後遺症をのこして昭和四七年一一月四日症状が固定したこと、<4>その後遺症というのは、少し仕事をすると左肩にこりを生じ、次第に頭痛がおこり、両側後頭神経圧痛があり、側方レントゲン撮影所見上生理的な前彎が減弱している、という内容であること、<5>右通院期間中の昭和四七年四月二一日から同年六月二日までは三池郡高田町濃施のヨコクラ病院に通院し(治療実日数は七)、頸椎けん引療法、脊椎矯正、ビタカイン注射などによる治療を受けたこと、<6>ヨコクラ病院での診断によると、主訴は頸腕症候群にみられる頸部緊迫感、頭痛、耳鳴り、頸部から上肢にわたる神経痛であり、頸部の前屈・後屈・左側屈・右側屈ともに著明の運動制限を認めず、回旋運動において後項部筋に疼痛があり、治療後は運動時違和感があつて雨天前に特に増悪の傾向があつたこと、以上の事実が認められ、右認定をくつがえすに足る証拠はない。

二  請求原因一の3(事故の態様)の事実は、前掲乙第一号証及び弁論の全趣旨によつて認められ、この認定を妨げる証拠はない。

三  請求原因二(責任原因についての主張事実)は、右乙第一号証、被告義正及び被告ユリ子各本人尋問の結果によつて認められ、右認定をくつがえすに足る証拠はない。被告義正の行為は右二の認定事実により民法七〇九条に該当するところ、本件のごとき場合の農業経営主体についても民法七一五条による責任を認めるのが相当である。すなわち、同条にいう事業というのは仕事というのと同じで極めて幅広く解されており、営利的であると非営利的であるとを問わず、家庭的なものであつてもよいし、事実上指揮監督をし、そしてこれを受けるという関係にあればよく、本件はこれらに該当し、且つその仕事につき自動車運転中に起きた事故であるからである。ゆえに、被告ユリ子は被告義正と共にいわゆる不真正連帯債務者の関係において、本件事故によつて原告が蒙つた損害を賠償すべき責任がある。

四  損害

1  慰藉料

原告が慰藉料算定の根拠として主張する事実(請求原因三の1)のうち(一)の事実は、証人森優、同西田従道の各証言によつて認められ、これに前記一で認定した原告の受傷の内容・治療期間・診断の内容・後遺症の内容程度等本件にあらわれた一切の事情を考慮するとき、原告の受くべき慰藉料は金五〇万円が相当であるものと認める。

2  逸失利益

原告が本件事故当時四二歳の未亡人で農家の主柱として農業及び家事に従事していたことは前認定のとおりであるところ、原告のごとく家業の主柱兼主婦の場合の逸失利益を算定するに当つては、できれば農業収入とそれ以外の主婦労働の評価との双方について、事故前と事故後とにおける差額を、事故後の農業収入損失も損益相殺のうえ計算して算定するのが正確を期することになる。しかし、例えば事故後の農業収入についていえば、それが他人を雇い又は親戚の加勢(これも無報酬ではない)によつてもたらされたものであり、しかもそれらの賃金額を立証し難いとか又は地域社会の親睦関係上賃金の代りに(若しくはお礼として)金銭以外の物品を交付したがその価額を立証できないなどのために、支出額を損害額として主張し難い場合には、家事のみに従事する主婦の逸失利益の算定方法で算定してしかるべきものと解すべきである。けだし、本件原告のごとき主婦の農業収入及び収入と評価すべき家事労働は、純然たる家事専従の主婦の収入(すなわち収入として評価すべき家事労働)を下ることはないはずであるからである。したがつて、本件の原告についても家事専従主婦の逸失利益の算定方法によつて算定することとする。

しかるときは、成立に争いのない甲第一一号証(賃金センサス第一巻第一表)によると、昭和四五年・産業計・企業規模計、四〇歳から四九歳までの女子労働者・学歴計の平均月間きまつて支給を受ける現金給与額は三万七、四〇〇円、年間賞与その他の特別給与額は九万二、四〇〇円であることが認められて右認定を妨げる何らの証拠もないから、原告は右と同額の収入を得られる地位にあつたものとして、

37,400(月額)×12(月数)+92,400(賞与等)=541,200

の計算のとおり、五四万一、二〇〇円の一年間の平均収入を得ていたということになる。

前記認定のとおり、原告は昭和四六年一二月二三日(事故日)から昭和四七年一一月四日まで通院したのであるが、証人森優、同西田従道の各証言及び原告本人尋問の結果によると、原告は本件事故のために同事故に遭つた時から昭和四七年六月二二日までの六ケ月間は農業・家事に従事できなかつたことを認めるに足る。しかし、原告が労働できなかつたことによる損害を被告らに負担させるにつき、その根拠たる労働できなかつた率を判断するには、これをなるべく客観的にみて妥当と認められるように為すべきであるところ、前記一で認定した、原告の受けた傷害の内容・程度に照らし、右六ケ月の期間中の労働不能率は六〇%程度と認めるのを相当とするから、右期間中のそれを六〇%として算定することとする。次に、原告は、昭和四七年六月二三日から同年一二月二二日までの六ケ月間は六割の、同年同月二三日から昭和四八年一二月二二日までの一年間は五割の、その後の一年間は四割の、その後の一年間は三割の、労働能力を喪失したと主張し、原告本人尋問における供述中には右主張にそうかのごとき部分もあるけれども、前述のとおり、労働能力喪失率はなるべく客観的にみて妥当なりと首肯できるように判断すべきである。そうすると、前記一で認定した各事実殊に原告の受傷の内容・程度、治療期間中の診断所見、後遺症の内容等を基として考えれば、まず昭和四七年六月二三日から同年一二月二二日までの六ケ月間の労働能力喪失率は四〇%と認めるのを相当とし、症状固定の翌月の昭和四七年一二月二三日からの労働能力喪失率は、前記認定事実を基としつつ自賠法施行令の別表(後遺障害別等級表)及び労働基準監督局長通牒昭和三二年七月二日基発第五五一号労働能力喪失率表をも参考として考えれば、一四%と認めるのが相当である。しかして、昭和四七年一二月二三日からの右労働能力喪失率の存続期間について按ずるに、証人龍国吉の証言及び原告本人尋問の結果によると、昭和四八年五月に行なわれた居住校区の公民館による春の運動会において原告は女子の部落対抗リレーに四〇歳代の選手として出場したことが認められるとともに、右本人尋問の結果によるとその当時もそれからのちもなお原告の後遺障害は存続していたことが認められ、なお同本人供述により原告は昭和四九年九月二六日頃自動車運転中他車から追突されて二ケ月間以上入院するという交通事故に遭つたことが認められるが同日以降の損害に対しても本件事故が原因の一部として寄与しているともみられるのでこの点も考慮にいれ、これらのことと前述後遺症の診断内容とを総合して考え、本件事故と相当因果関係の範囲内にある存続期間は二年間すなわち昭和四九年一二月二二日までとするのが相当であると認める。

よつて、右各期の逸失利益を計算すれば、

(一)  昭和四六年一二月二三日から昭和四七年六月二二日までの分は、

541,200(年額)×0.5(年)×0.6(喪失率)=162,360

の計算のとおり、一六万二、三六〇円であり、

(二)  昭和四七年六月二三日から同年一二月二二日までの分は、

541,200×0.5×0.4(喪失率)=108,240

の計算のとおり一〇万八、二四〇円であり、

(三)  昭和四七年一二月二三日から昭和四九年一二月二二日までの分は、

541,200×2(年)×0.14(喪失率)=151,536

右(一)ないし(三)の合計額は四四万二、一三六円である。

以上慰藉料と逸失利益との合計は九四万二、一三六円である。

3  弁護士費用

原告が本件の訴提起及び訴訟追行を原告訴訟代理人に委任したことは本件記録上及び原告本人尋問の結果によつて明らかであり、原告がその主張のとおりに着手金をすでに支払い且つ謝金支払の契約をしたことは原告本人尋問の結果によつて認められる。しかして、当裁判所は、本件訴訟の事案の内容及び前記認容額を総合考慮して、本件においては弁護士費用中被告らに負担させる金額は一〇万円をもつて相当と認める。

以上1ないし3の合計は一〇四万二、一三六円である。

五  原告との間に示談が成立しその示談どおりに支払ずみであるとの被告らの抗弁については、証人筒井勝の証言中右主張にそう部分はにわかに措信しがたく、被告ユリ子本人尋問の結果によつてはこれを認めるに足りず、他に右主張事実を認めるに足る証拠はない。かえつて、証人小山泉の証言及び原告本人尋問の結果によると、被告ら主張のごとき示談は成立しなかつたことが優に認められるところである。よつて、被告らの右抗弁は理由がない。

六  以上の次第であるから、原告の本訴請求は、被告らに対し、金一〇四万二、一三六円及び内金九四万二、一三六円に対する本件事故の日たる昭和四六年一二月二三日から、内金一〇万円に対する本判決言渡の日の翌日(昭和五一年八月二六日)から各支払ずみに至るまで民事法定利率年五分の割合による遅延損害金の各自支払を求める限度において正当としてこれを認容し、その余は失当としてこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九二条本文、九三条一項本文を、仮執行の宣言及びその免脱の宣言につき同法一九六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 久保園忍)

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